産後クライシスの症状や原因とは?対処法についても解説

  • 作成日

    作成日

    2023/06/15

  • 更新日

    更新日

    2024/03/28

  • アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

目次

離婚に関するご相談は

アディーレへ!

産後クライシスの症状や原因とは?対処法についても解説

「産後クライシス」とは、出産後数年の間に急激に夫婦仲が悪化する現象のことで、2012年にNHKの情報提供番組である「あさイチ」の中で提唱され、社会的に広がった言葉です。

産後、夫婦仲が急激に悪化したけれども、一時的な現象にすぎず、その後夫婦の努力により夫婦関係が改善する場合もあれば、最終的に夫婦関係が破綻してしまい、離婚に至る場合もあります。

このコラムでは、産後クライシスの症状や原因、対処法などについて解説します。

産後クライシスになるとどうなるのか

産後は、夫婦生活のなかに子育てという重大で新たなミッションが加わります。
夫婦ともに、子育てをするなかで、今までの生活との違いに戸惑うこともあるでしょう。

妻は、「夫が子育ての忙しさを理解してくれない」、「子どもより仕事や自分の予定を優先する」などの不満を持ち、夫に対するいら立ちを募らせることもあるようです。

夫は、「子育てをしたくても何をすればいいかわからない」、「妻が子どもにかかりっきりで自分に興味がなくなった」、「仕事が忙しくて子育てができないのは仕方がない」などと考え、妻との関係に悩むことがあります。

(1)産後クライシスの見極め方は?

産後クライシスに陥っている夫婦の症状としては、次のようなものが挙げられます。

• 些細なことで配偶者にイライラする
• 配偶者に愛情を感じなくなる
• 配偶者とのスキンシップに拒否感や嫌悪感を持つ
• 配偶者からの愛情を感じられず冷たくされていると感じる
• 感情のコントロールができず攻撃的になる
• 冷たい態度をとったり、けんか腰になったりする
• 夫が家事・育児に非協力的なことに妻が不満を持つ
• 妻が子どもにしか目を向けず自分を放置していることに夫が不満を持つ
• 妻がいつもイライラしていて攻撃的で、家にいてもくつろげない
互いにイライラや不満を抱えることで、夫婦喧嘩が絶えない状態や、家庭での会話が少なくなっている状態になってしまうのです。
このような場合、産後クライシスに陥っているおそれがあるといえるでしょう。

(2)産後クライシスを放置するとどうなる?

イライラや不満を我慢し、自分で処理しようとすると、精神的に疲弊し、話合いにより歩み寄ろうとする気持ちがなくなってしまいます。

また、夫が家庭に居場所を感じることができず、さらに家庭で過ごす時間が減って仕事や自分の予定を優先するようになるかもしれません。
夫婦で共有する時間が減ることで、妻は夫に対してますます不満を持つようになるでしょう。

結果として、夫婦間のコミュニケーション不足が加速してさらに夫婦関係が悪化し、修復不可能になってしまう可能性もあります。

そのため、「これは産後クライシスかな?」と思ったら、冷静に夫婦の現状を把握して、対処するようにしましょう。

(3)産後クライシスはいつまで続く?

産後クライシスが続く期間は、産後の体調回復、子育ての状況や環境、夫の出産や子育てへの理解や協力などにより異なりますが、一般的に産後数年といわれています。

産後クライシスに陥っていることを把握し、夫婦で対処するなどして協力して夫婦仲改善の努力をした夫婦は、短期間で終了するケースもあるでしょう。
しかし、お互いの理解が得られず、協力もできなかった場合には、長期にわたって産後クライシスが続くケースもあります。

産後クライシスと産後うつの違い

産後うつ(出産後に発症するうつ病)は子育てへの不安やストレスなどにより妻が陥る病気のことです。
具体的には、些細なことでイライラするだけでなく、涙が出る、夜眠れない、食事が取れないといった症状が出るとされています。
産後うつは病気のため、医療機関を受診し必要に応じて治療を受ける必要があるでしょう。

一方、産後クライシスは一般的に産後の夫婦関係が悪化してしまうことを表す言葉であり、病気ではありません。
したがって、対処は必要ですが、医師による診断や治療の対象にはならないと考えられます。

考えられる産後クライシスの原因

考えられる産後クライシスの原因
なぜ産後クライシスが起こってしまうのでしょうか。原因は人それぞれですが、たとえば次のようなことが挙げられます。
・生活の変化(子ども中心となるなど)
・ホルモンバランスの乱れ
・夫が育児や家事に非協力的
・コミュニケーション不足
・育児についての考え方の違いなど

(1)生活の変化(子ども中心となるなど)

産前と異なり、産後は、子どもが最優先の生活となります。特に出産した妻にとって、この生活の変化は顕著です。
自分の時間はなくなり、自由に行動することもできなくなり、眠たくても眠ることはできず、すべてが子ども中心の生活となります。

特に乳幼児は、主に妻が世話をする家庭がほとんどだと思われます。 妻は、経腟分娩や帝王切開で傷ついた体を抱えながら、出産直後から母乳やミルクを3時間単位で飲ませて、おむつを替え、寝かしつけて、体調の変化に気を配りながら24時間体制で子どもの世話をしなければなりません。

一方で、夫は飲み会に行ったり、休日に友達と会ったり、夜も子どもが泣いても起きずに寝続けていたりすれば、妻は自分にばかり子育ての負担がかかっているとストレスを感じるでしょう。

(2)ホルモンバランスの乱れ

女性の妊娠中は、プロゲステロン、エストロゲンなどの女性ホルモンが急激に増えますが、産後は急激に女性ホルモンが老人レベルまで低下します。
また、陣痛により全身が筋肉痛になったり、会陰切開により座ることもままならなかったり、大きくなった子宮が元に戻ろうとする収縮による後陣痛など、産後は体に大きな負担がかかって当然です。

このようなホルモンバランスの急激な変化、体への大きな負担、睡眠不足などの負担などから、ストレスで感情をコントロールできなくなったり、攻撃的になったりすることがあります。

(3)夫が育児や家事に非協力的

夫が育児・家事に非協力的な場合、妻は幻滅して愛情が薄れたり、強いストレスや徒労感を感じたりすることがあります。

妻が、夫に対して不満を伝え、家事育児への協力を求めたりすることで、夫の理解が深まり、夫婦関係が改善することもありますが、反対に夫婦喧嘩になってしまうこともあります。
夫婦間の溝が埋まらないと、妻が夫を頼ることを止めて、助けを求めて実家に帰ることもあるでしょう。しかし、夫がそれを「自分をないがしろにしている」と不満に思うこともあります。

(4)コミュニケーション不足

妻は、産後の生活やホルモンバランスの変化などで疲労し、対して夫も生活や妻の変化に対応できないことなどが原因で疲労してしまいます。
そのため、夫婦の会話やコミュニケーションが減り、お互いへの愛情を感じられなくなることがあるかもしれません。

性欲は人それぞれですが、産後のホルモンバランスの変化や身体の回復不足などが原因で、夫がセックスを望んでも、妻が拒否することはよくあることです。
セックスについては夫婦間でよく話し合うことが大切ですが、セックスを拒否され、もはや愛されていないと感じた夫が浮気に走ってしまうことも考えられます。

(5)育児についての考え方の違い

育児の考え方が夫婦で一致せず、相手の育児方針に不満を持つことがあります。 また、「自分は一生懸命育児に取り組んでいるのに、相手は何も考えてくれない」と感じてしまうと、配偶者に対して子育ての不安や悩みを相談することもなくなり、コミュニケーションが減って、産後クライシスの状態になってしまうこともあるでしょう。

離婚に関するご相談は
アディーレへ!

産後クライシスの対処法とは

産後クライシスに陥っていることに気づいたら試したい対処法を紹介します。
夫婦の状況によって、紹介した対処法を試してみても、必ずしも夫婦関係が改善されるわけではありませんが、一例として参考になれば幸いです。

(1)自分たちの状況を冷静かつ客観的に見る

夫婦
産後クライシスは、どの夫婦にも起こり得ることです。
産後クライシスに陥っていると、なかなか冷静かつ客観的に自分たちの状況を理解することは難しいかもしれません。

しかし、夫婦関係を見直して改善し、よりよい家庭を作る機会だととらえて、しっかりと話し合うようにしましょう。
その際は、相手を一方的に責めるのではなく、お互いに相手の話に耳を傾ける姿勢を持つようにしましょう。

たとえば、双方の不満や疑問を把握して問題を共有し、どのようにすればお互いが快適でよりよい結婚生活を送ることができるかについて、前向きに話し合うようにします。

夫は、産後女性の身体に起こっている変化について知識がなく、産後の妻の変化について理解できないことがあります。
そのため妻が、自分のメンタルやホルモンバランス、身体の変化などについて具体的に説明しましょう。そうすることで、夫も妻の変化の原因について理解し、夫婦関係の改善が期待できるでしょう。

(2)頼れる人やサービスを利用してストレスを溜めない

子育ては大変な仕事です。
実家に頼れるのであれば応援を求めたり、ベビーシッターや託児所、ファミリーサポートセンターを利用して物理的な負担を軽減したり、人に相談して精神的な負担を軽減するようにしましょう。

何よりも、1人で子育ての負担を背負い込まないようにすることが重要です。

(3)家事育児の協力についてしっかりと話し合う

家事育児の分担や協力について夫婦でしっかりと話し合い、どちらかに一方的に負担がかからないような方法を考え、実行するようにします。

産後は、夫婦ともに生活の変化や相手の態度にストレスを感じがちです。
お互い不満やストレスを溜め込まないように、家事育児の協力についてはこまめに話し合い、妥協点を見つけることが大切です。

(4)夫婦のコミュニケーションを大切にする

産後は子育てに時間がとられますが、夫婦で会話したり、一緒の時間を共有したりするなど、なるべく夫婦の時間を持つようにしましょう。 子どもを一時的に預けて2人のデートを楽しむのもよいでしょう。

子育ての忙しさで、まとまった時間をとることは難しいかもしれませんが、お互いの近況や喜怒哀楽を伝えたり、愛情や感謝の気持ちを表したりしてください。

(5)短時間でも自分の時間を確保する

プライベートな時間

プライベートな時間を確保することは、ストレス解消に極めて効果的です。

子育てを担う妻は、夫に子どもの世話を頼んで、買い物や散歩、おいしいものを食べたり、友人と話す機会を設けたりしてプライベートな時間を過ごすとよいでしょう。
このような時間がストレス解消につながり、産後クライシス脱却のきっかけとなることがあります。
また、夫なりに子育てのストレスを感じていることも多いです。
妻からすれば、夫のほうが何かと自由な時間が多いように感じるかもしれませんが、趣味や友人との外出も、回数や時間を決めて認める方向で話し合うとよいでしょう。

離婚に関するご相談は
アディーレへ!

産後クライシスを原因に離婚はできるのか

産後クライシスがきっかけで離婚したいと考える妻(夫)もいます。
産後クライシスを原因とする離婚は可能なのでしょうか。

(1)協議離婚であれば産後クライシスが原因の離婚が可能

日本では、夫婦が話し合って離婚に合意すれば、理由や原因を問わず離婚することが可能です。

したがって、協議離婚(夫婦が話し合って離婚に合意すること)であれば、産後クライシスが原因であっても離婚できます。
離婚の際には、財産分与、親権、養育費、面会交流など、事前に話し合って決めるべき事柄について整理し、合意を目指すようにしましょう。

離婚前に考えておくべきことについては、「離婚を考えたら準備する5つのこと。失敗しないためのポイントを解説!」をご覧ください。

(2)裁判離婚だと産後クライシスが原因の離婚は困難

一方が離婚を希望しても、他方が離婚を拒否すれば、協議離婚は成立しません。 離婚したい側は、離婚調停や離婚訴訟を提起して、離婚を目指すことになりますが、最終的に裁判所が離婚を認めるためには、法律上離婚が認められる原因(法定離婚事由)が必要です。

法定離婚事由(民法第770条1項各号)は、次の5つです。
5つの法定離婚事由
1. 不貞行為
2. 悪意の遺棄
3. 3年以上の生死不明
4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと
5. その他婚姻を継続し難い重大な事由

産後クライシスは、この5つに直接は該当しないため、産後クライシスを直接的な原因とする離婚が裁判で認められることは考え難いでしょう。

ただし、産後クライシスが原因で夫婦関係が破綻して修復不可能な状態となっていたり、肉体関係をともなう浮気(不貞行為)を行ったりした場合には、上記の法定事由に該当するとして、離婚が認められる可能性があります。
法定離婚事由について詳しくは「離婚に必要な5つの理由」をご覧ください。

産後クライシスで離婚を検討している場合に知っておきたいこと

産後クライシスで離婚を検討している方に向けて、知っておくべきことをご説明します。

(1)一時的な感情ではないかを冷静に判断することが大切

産後、急激に夫婦関係が悪化して離婚したくなった場合、産後クライシスで一時的に情緒不安定になったことにより、冷静な判断ができていない可能性があります。
そのような状況下で、感情的に離婚を決めてしまうと、離婚後に後悔してしまうことがあります。

まずは一旦冷静になって、本当に離婚する必要があるのか、離婚したいのかについて考えるようにしましょう。

配偶者に対して不満があるのであれば、不満を伝えて改善を求めたうえで、配偶者の努力や対応の変化を確認してから、離婚を検討しても遅くはありません。

(2)離婚後の生活をシミュレーションしておくとよい

現在の配偶者のいない、離婚後の人生を考えてみましょう。
考える主なポイントは、生活ができるか、仕事と子どもへの影響があるかということです。

専業主婦(夫)の場合、基本的には自分の生活費は自分で稼がなければなりません。
そのため、仕事を探したり、実家の援助を得られないか相談したりする必要があるでしょう。
自分が子どもを引き取る場合には、仕事と子どもへの影響も考えることになります。
引越し先を確保して初期費用を準備できるのか、フルタイムで働きながら子どもの世話ができるのか、時短勤務が可能か、などが検討事項となるでしょう。

(3)一時的に別居して頭を冷やす選択もある

産後クライシスに陥ると、相手と顔を合わせるのも嫌になってしまう場合があります。
そのような状態になってしまったら、夫婦どちらかが実家に帰って一時的に別居するなどして、お互い冷静に夫婦関係を見直すとよいかもしれません。

別居して一度離れてみることで、自分や相手の長所や短所、2人の関係性、子どもにとって配偶者が必要かなどについて冷静に考えられるようになることがあります。
その結果、スムーズに話合いが進むようになり、夫婦関係の改善につながることもあるでしょう。

【まとめ】産後クライシスはどの夫婦にも起こりうる問題!原因や対処法を理解しよう

産後クライシスはどの夫婦にも起こり得ることです。
産後クライシスの原因を理解して対処法を実践することで、離婚に至るほどの夫婦関係の悪化を防げるかもしれないため、すぐに離婚を決断することはあまりおすすめしません。

しかし、なかには産後クライシスがきっかけで浮気(不貞行為)問題が生じたり、夫婦関係が完全に破綻してしまったりしたなど、真剣に離婚を望むようになる場合もあります。
そうなった場合には、離婚条件(慰謝料、養育費、親権など)や準備について、自分に不利にならないよう、事前に弁護士に相談しておくとよいでしょう。

離婚に関するご相談は
アディーレへ!

この記事の監修弁護士

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

林 頼信の顔写真
  • 本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。
FREE 0120-818-121 朝9時~夜10時・土日祝日も受付中